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【読書感想】石井千湖『文豪たちの友情』

 
 文豪たちの友情
 石井千湖
 出版社:新潮社(新潮文庫)
 発売日:2021/08/30

 面白いけど時には泣ける、文豪たちの交友録

 日本近代文学を彩る数々の文豪たち。そんな彼らの交友関係を紹介してくれる本書は、名作として名高い彼らの作品に感じる難さを離れたあまりに人間臭い一面を伝えてくれる。
 文豪に関して、そのエピソードやプライベートを語る書籍は今までも数多く出版されてきているが、"交友関係"という側面にフォーカスされたものはそう多くはない。ただ、本書もそう銘打っておきながら実際は個々の作家のエピソードがメインで、実質友情を巡る部分は少ない。またそれぞれの作家のプライベートを読み聞いたことがある人にとっては既知のものばかりだ。
 とはいえ、今まで近代文学に触れてこなかった読者や作家本人のエピソードに触れようとする読者にとって、本書はその入門編として実に最適である。
 携帯電話なんてない時代。現代とは違い、濃密な関係性が自ずと構築されていた時代にあって、さまざまな交流を通じて切磋琢磨し、それが文学へと昇華されていったのだろうことを彷彿とさせるエピソードには、日本近代文学の成立の背景を推し量るべく余白を持っている。
 著者が私淑していること、また当人の交友関係の広さから佐藤春夫に関するエピソードが豊富だが、その点もまた文豪たちの交流を知るべく醍醐味かもしれない。
 
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