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【読書感想】森藤ヒサシ『家族写真の魔法』

 
 家族写真の魔法
 森藤ヒサシ
 出版社:WAVE出版
 2020/06/16 

家族写真という愛のかたち

 写真館の代表も務めるフォトグラファー・森藤ヒサシ氏(2015年まではオヌキヒサシ)による家族写真についての本。
 そもそも家族写真をテーマとした書籍はそんなに多くないという印象がある。その中でも本書は、写真館で家族写真を撮る時の構図や服装、あるいはスマホで自ら撮影する方法など、斬新な構図や技術と相俟ってかなり稀有な情報が盛りだくさんだ。
 また掲載されている写真も非常に多く、どの一枚をとってもその家族を彩る愛情がにじみ出ていて読むだけでも心暖まる。

 しかし本書の意義は、技術的な側面や家族写真に関する知識といった側面以上に、なにかとても大切なことを思い出させてくれる点にある。
 私自身、実のところ身内とは昔からあまり仲が良くない。正確には価値観や反りがまるっきり合わないでいる。
 その一方で、私たち兄弟が幼少の頃より両親はことあるごとに写真館で家族写真を撮ってきた。
 今でも親兄弟と反目することはしばしばあるが、両親が数多くの家族写真を残してきてくれたことは、いま自分が中年に差し掛かる歳となってとてもありがたいことだと感じている。
 常々、写真と音楽は人を一瞬で思い出の過去へ連れて行ってくれるものだと考えているが、その中でも家族写真というのはその時々の家族の姿を切り取った貴重な財産といえるだろう。
 それぞれの家族の背景にあるドラマは違えども、この宝物が持っている価値は極めて重い。それは人生を豊かにする要素のひとつであり、家族愛という平凡だが不思議な、しかしあまりにも重要なテーマを私たちに投げかけてくるまさしく魔法だ。
 
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