北斗七星と北極星
さて前回の天体写真を撮りたいの!~アンドロメダ銀河を狙え!編~の最後に掲載したアンドロメダ銀河およびプレアデス星団の写真ですが、画像の合成技術云々の前によく見ると星像の"流れ"がとても気になった。
"流れ"とは、長時間露出している際、本来地球の自転と合わせて動く赤道儀の回転がズレてしまい、星像が少し棒状に伸びてしまっている状態をいう。
前回の写真に付したデータを見てもらえば分かる通り、かなりの焦点距離と時間で対象を追っているのでその影響はかなり大きい。
……とはいえ前回導入したポータブル赤道儀『ポラリエ』では、のぞき穴から北極星を捉えて自転軸を合わせる(極軸合わせ)方法しかなく、その誤差は望遠にすればするほど、露出時間を長くすればするほど大きくなってしまう。
はてどーしたものかと思っていた頃、ポラリエに関するWEB記事を読んでいて目に飛び込んできたのがこちら、
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『ポラリエ用ステップアップキットⅡ』
極めて精密な極軸合わせができるポラリエ用の極軸望遠鏡があるのは知っていた。
しかし極軸望遠鏡単品だけでは、カメラを取り付けた雲台を一度外して極軸望遠鏡を取り付け極軸合わせをし、再び極軸望遠鏡を外して更にカメラを取り付けた雲台をポラリエ本体に取り付けるという手間が発生する。しかもその際、かなり慎重に作業しないとせっかく合わせた極軸がズレてしまう可能性が高い。
一方でこの『ステップアップキットⅡ』を使えば、始めからカメラも極軸望遠鏡もポラリエに取り付けたままで極軸合わせから撮影まで可能だ。
ということで、なんの躊躇いもなく大人の財力でポチポチポチっとしてしまったわけですw
今回はVIXEN特製の箱に入ってきた!
内容物はこちら
・極軸微動雲台
・ポラリエ極軸望遠鏡 PF-LⅡ
・ポラリエ用マルチ雲台ベース
・スライド雲台プレートDD
このほかに『APフォトガイダー用ウェイト軸』『バランスウェイトWT 1kg』も同時購入。
では早速それぞれ見ていきましょう。
●極軸微動雲台
これは三脚とポラリエを固定する雲台。
名前の通り"微動"というだけあって経緯方向にそれぞれ±15°の細かな調整が可能で極軸合わせの際に大変便利。
また低緯度(0°~30°)、中緯度(30°~60°初期設定)、高緯度(60°~85°)とおおまかな調整も可能。日本と違う緯度の地域で使用する場合でない限り変更する必要はない。
クイック取付コマをポラリエに取り付け雲台本体と固定させる。
こんな感じになる。
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Vixen 極軸微動雲台
●ポラリエ極軸望遠鏡 PF-LⅡ
続いては本丸・極軸望遠鏡。
まずポラリエ前面の雲台のネジを緩め取り外す。
次に背面の方位磁石付き裏フタを取り外す(ネジ式)。
あとはそこへ極軸望遠鏡を差し込むだけ。磁気で固定される。
アイピース上部の白いボタンを押すと、極軸合わせの際に用いる望遠鏡内のスケールが赤く点灯(暗視野照明)する。またその下のダイヤルで照明の明るさを調整できる。
ピントはアイピースを回すことで調整可能。
で、中を覗くと
こんな感じ。
肝心の極軸合わせだが、細かいことまで書いているとあまりに煩雑になるのでここではザっと大まかな説明に留めます。
1、極軸望遠鏡を回して、北斗七星およびカシオペア座の方向を合わせる。望遠鏡内には北斗七星もカシオペア座も見えないので、目見当で大体の方向をそろえる。
2、写真中央のすぐ下にある「POLARIS」(赤丸の中)を貫く線分の切れ目に北極星を導入する。
3、「δUMi」と「51Cep」の近くにそれぞれこぐま座δ星・ケフェウス座51番星が見えるので、極軸望遠鏡を回しそれぞれ目盛りの中へ導入する。この際2で合わせた北極星がズレてしまうが問題はなし。
4、極軸微動雲台のツマミを回し、北極星を「POLARIS」に導入する。
とこういう具合に調整していきます。
正確には目盛りを使った調整などありますが、それは取扱説明書に詳説されているのでそちらを参照してください。
また南半球でも使用できるのですが、そちらの説明も割愛します(取扱説明書要参照)。
とはいえ実際は極端な長時間露出や望遠を使わない限り、「2」まで設定ができていればほぼ問題はない模様。
しかしちゃんと設定すれば、±3´角以内という据付精度。使わない手はありませんね。
さて、極軸望遠鏡を取り付けたままではポラリエとカメラを接続できないことは先にも述べた通りだが、その問題を解消してくれるのが次の代物。
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Vixen ポラリエ極軸望遠鏡 PF-LII
Vixen ポラリエU 極軸望遠鏡 PF-LIIセット
●ポラリエ用マルチ雲台ベース
これをポラリエにしっかりと固定します。
ポラリエ本体のみでは二か所のツマミで固定するだけでしたが、この雲台ベースでは三点を六角ナットで確実に固定できます。
そして真ん中に空いた穴に極軸望遠鏡の鏡筒が差し込まれるという具合。
しかしこれでもカメラとポラリエを接続することはできない。
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Vixen ポラリエ用マルチ雲台ベース
●スライド雲台プレートDD
これをマルチ雲台ベースに取り付ける。
このプレートはマルチ雲台ベース上をスライドできるように設計されているので、搭載するカメラや撮影角度などによってさまざまに調整可能。
一方の端に自由雲台とカメラをとりつけると、その反対側には両端のバランスをとるため、APフォトガイダー用ウェイト軸とバランスウェイトを取り付ける。
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Vixen スライド雲台プレートDD
ウェイト軸はVIXENの赤道儀でも取付らているもので、バランスウェイトの落下防止用のキャップを取り外すことでウェイト軸をつなげ延長することも可能。
これで結構な重さの望遠レンズで撮影しても、カメラの重さでポラリエのバランスが崩れてしまうのを防ぐことができる。
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Vixen 天体望遠鏡アクセサリー APフォトガイダー用ウエイト軸
また今回は導入しなかったが、『クイックリリースアングルプレート』などがあると重心取りやバランスウェイトの増強をしなくても、カメラを自在な方向に素早く取り付けることができる。
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Vixen クイックリリースクランプセット
マルチ雲台ベースにはプレート固定ネジと脱落防止ネジのほかに、クランプネジがある。
これを緩めることで雲台ベースを自由回転させることができ、カメラとウェイトのバランスを調整する。
このバランスの取り方も、重たいレンズやそれこそ重量のある望遠鏡などを用いる際はかなり細かな調整が必要となってくるが、その話しはまた別の機会に譲りたい。
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Vixen バランスウエイトWT1kg
以上が『ポラリエ ステップアップキットⅡ』の概要だったが、ポラリエ本体を含めこれらのキットにバランスウェイト(1kg)を加えると総重量は4kg近くにまでなってしまう。
更にここへカメラ本体とレンズが加わるのだから、三脚は最低でも耐荷重5kg以上のものを用意したい。
ちなみに私がこれまで使っていた三脚は耐荷重2kgだったので、急遽耐荷重5kgのものを導入しました。
また通販サイトなどでは極軸微動雲台付きのVIXEN純正三脚なども売られているので、そちらもオススメしたい。
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Vixen 三脚 M-155MA 4段伸縮式
……ただ、ここであることに気づいてしまうのですよ。
「アレ? 総額考えたら、赤道儀単体買えたんじゃね?」
そう、最近の赤道儀は大分安価なものも登場しているのである。
もちろん大型の望遠鏡搭載可能なモノや自動導入装置がついているものなどは今でもそれ相応のお値段ではあるが、軽量の望遠鏡を搭載できるモノや星野写真用のモノならポラリエおよびステップアップキットをそろえられるお値段で十分導入可能だ。
ただし、赤道儀単体となると三脚もろもろ含めての大きさがあり、かさばることを考えねばならない。
ポラリエのようなポータブル赤道儀の場合だと、分解してコンパクトに持ち運べるという利便性がある。
私の現状では後者をとった方が何かとメリットも大きいので、今回の導入に踏み切ったワケです。
でまあ早速、星を撮りに出かけてみよう! ……と思ったのですが、北国の冬は晴れ間が少ないのです。
そして今冬は昨年の雪の降り始めよりまさかの曇天続き!
昨年11月くらいからずっとこんな天気。
日中晴れてても夕方には曇りだし、夕方晴れてきたなと思ってもすぐに曇り始めたりあるいは薄雲がかかっていたり。
ちょっと今年は例年以上に晴れ間が少ない気がする。
まあ仮にカラッと夜晴れてくれても、それはすなわち気温がめっちゃ下がることを意味していまして、いわゆる「しばれる」ワケです。
なんとか晴れ間を見つけて撮った冬の星座の代表格『オリオン座』。
焦点距離:43mm 絞り:f/5 露光時間:20秒 ISO:1600 トリミング済
で、若干流れが気になるけど『オリオン大星雲』。
焦点距離:250mm 絞り:f/6.3 露光時間:4分(120秒×2) ISO:400 トリミング・コンポジット済
やっぱり寒すぎて手がカジカんでしまい、正直極軸合わせどころではなかったw
でもざっくりながら、のぞき穴のみで合わせるよりも精度が高いことは実感できた。
とまあ今回はこんな感じになりましたが、果たして今後、夜の晴れ間に出会えるのか!? そしてシバレる中でちゃんと極軸合わせできるのか!?
次回に続きます……。
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