ミステリと言う勿れ(1)
田村由美
出版社:小学館
発売日:2018/01/10
ミステリっぽいけどミステリっぽくもない、ミステリな対話編
『BASARA』などの作者・田村由美先生の話題作。
作者曰く「舞台劇をイメージ」した「閉鎖空間での会話だけ」が織り成される内容は、主人公と登場人物との対話に重点が置かれ、数あるミステリや探偵ものの小説やマンガにはない独特の世界観を描き出している。
主人公はどこにでもいる大学生……ではなく、名前も髪型も趣味趣向もどこかちょっと風変わりで、いうなれば"不思議ちゃん"に近い雰囲気を持っている「久能整(くのう ととのう)」。
いつも主人公が事件の渦中にいる例は本作でも同じだが、ヒントや気付きなどを元に推理を展開していく一般的なミステリ・探偵ものの主人公とは一線を画し、本作の主人公は論理的かつ哲学的に目の前の事件を"語って"いく。
日本社会では多くの場面で求められる"大人"の意見や態度、そんな綺麗事や建前を感情的になることなく淡々と切り捨て、現実を突きつける。
正論を吐いて相手を追い詰めているともいえるかもしれないが、本作で扱われている事件の内容はどれもかなりシリアスなので、そこまであからさまに追いつめているという雰囲気はない。
各事件そのものは一つの短編小説のようにも読めるのだが、ストーリーが進むにつれそれぞれが重層的にリンクしていくのは読み応えがある。また次第に増えていく登場人物たちも、その関係が重層的につながってくるのも面白い。
登場人物たちもみな個性的だが、その濃淡ははっきりと描き分けられている感じがあり、これもまた伏線なのだろうかと予感されてならない。
だがもっともそれを感じさせるのは、主人公だ。その人物像や生活はほんの一部しか晒されておらず、その過去についてはほぼ皆無だ。経歴を匂わせるシーンが何か所かあるが、そこがまた意味深に扱われている。
現在7巻まで発行されているが、今後もその展開に目が離せないシリーズだ。
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