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【映画感想】『王立宇宙軍 オネアミスの翼』

2018年07月09日

 もはや知る人ぞ知る名作。そして個人的に一番好きなアニメ映画。
 製作はガイナックス。音楽は坂本龍一が担当している。


DVD版

Blu-ray版

 昭和62(1987)年に公開された本作は、王立宇宙軍士官の主人公が仲間たちとロケット打ち上げを目指すという単純明快なストーリーなのだが、まず目を引くのは今となっては豪華すぎるスタッフ陣であろうか?
  監督・原案・脚本:山賀博之
  助監督:赤井孝美、樋口真嗣、増尾昭一
  キャラクターデザイン・作画監督:貞本義行
  作画監督:庵野秀明、飯田史雄、森山雄治
  企画:岡田斗司夫、渡辺繁
                      etc……
 また作画などでは江川達也先生なども参加されている。当時前途有望な若手がこぞって参加し鋭意を結集して作られたのがこの作品だ。
 特に庵野秀明はじめ、スタジオジブリなどで『風の谷のナウシカ』や『超時空要塞マクロス』の作品を経てプロの現場を学んだ若者が中心となっている。
 若さゆえの情熱を感じられる部分として、本作の名シーンとして挙げられることも多い、終盤でロケットが離陸する場面。ここではロケットの打ち上げに伴い機体から大量の氷の破片が落下するのだが、およそ3秒間という1カットのために250枚ものセル画が費やされ、また一片の氷片につきセル画一枚が使われていたというから驚きだ。今DVD等でそのシーンを見直しても、CGかと思えるほどの緻密さだ。
 こうした画に対しての情熱もそうだが、この作品には細部に至るまでのこだわりが見て取れる。
 まず劇中で使われている文字など、一見するとデタラメのように見えるが、実はちゃんと言語的な法則性をもって描かれている。
 また後に公式の資料集などでも出ているが、そこには製作段階で提案された小道具などのラフも掲載されている。複数のデザイナーによってオリジナルの工具や食器が生み出され、劇中をよりオリジナリティあふれるものに彩っている。
 確かに我々の日常生活を見渡してみても、たとえば「日本的なモノ」として挙げられるものすべてが一人のデザイナーによってデザインされたものでもなければ、一人の建築家によって建てられたものでもない。様々な人々が生み出した様々なモノを通し、全体として「日本的なモノ」となっているのではないか?
 そうしたこだわりの一つひとつが架空の社会である劇中の舞台を、よりリアリティをもった形で観客の眼前に拡げてくれている。

 登場人物たちの人間臭さも見どころとしてあげられるのだが、特に注目に値するのはヒロインのリイクニの卑屈さだろうか? 多分人類の映画史上もっとも卑屈なヒロインといってよいと思う。それは企画の段階から紆余曲折あって、公開後にもさまざまな波紋を呼んだ本作品を裏打ちするかのような影がある。


 
 オネアミスの翼 ―王立宇宙軍― オリジナル・サウンド・トラック


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