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【読書感想】川井俊夫『金は払う、冒険は愉快だ』

2025年02月23日

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 金は払う、冒険は愉快だ
 川井俊夫
 出版社:素粒社
 発売日:2023/09/13

古道具界のフィリップ・マーロウ

 これは不条理小説なのか? それとも無頼派小説なのか? 私小説ともエッセイとも言い難い、6B鉛筆で書きなぐったかのような武骨な一冊。
 毒舌と真面目さが入り混じるとある古物商の日常は、悪態と罵倒に満ちていながらどこか頭を殴られたような痛快さと風通しの良さがある。その半生と日常はあまりにも唐突で粗暴であるが、愛に満ち溢れている。なんとも表現しがたく、また評価もしにくい作品であることはたしかだが、日々の喧騒の中で忘れてしまいがちな大切ななにかに気づかせてくれる。
 人生のなにが正解で失敗だったのか、その答えはどこにもありえないし出すこともできない。だが、「不適切にもほどがある」現実はどこか心地良いものだ。

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