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【読書感想】フレデリック・クレインス『オランダ商館長が見た 江戸の災害』

 
 オランダ商館長が見た 江戸の災害
 フレデリック・クレインス 著 , 磯田道史 解説

 出版社:講談社(講談社現代新書)
 発売日:2019/12/11
 

 オランダに眠っていた江戸時代の災害の記録。そこから見えてくる日本人の文化と気質

 オランダ・ハーグ国立文書館に保管されていた膨大な量の日記。それは鎖国政策をとっていた江戸時代ほぼ全期にわたるもので、記したのは長崎・平戸の出島において日本と貿易を行っていた歴代のオランダ商館長だ。
 この商館長の日記は、貿易を行っていたオランダ東インド会社への報告のほか、次期商館長のためのリファレンスという側面も持ち合わせていた。そのため貿易業務に関わる事務的な記述以外にも、当時の日本の習俗はじめ身の回りで起きた事象を事細かく記載されている。特にオランダという土地柄ゆえか、自然災害に関しては特別の興味と緊迫感をもって克明に描写されているという。
 本書ではそんな商館長日記の災害に関する記述を日本側の史料などと突き合わせ、日本の災害史の一側面を紐解こうとしている。
 明暦の大火に代表される江戸の火事、元禄地震や雲仙普賢岳の噴火など、今なお日本でも大きな問題となる自然災害について、日本側の史料にはその状況をリアルタイムで詳細しているものが少ないことと相俟って、大変貴重な証言となっている。
 災害発生時のひとびとの動揺と混乱する現場の記述など、自然災害にあまり耐性のなかったオランダ人だからこその純粋な反応が垣間見れる。またその時の日本人の反応とのギャップやその後の復興の速さなど、異文化ゆえに新鮮な眼差しが向けられていてとても興味深く読める。特に日本近世史に詳しい磯田氏による解説では、一つひとつの災害から読み解ける日本人の気質や文化習俗への指摘がなされ、それがなぜオランダ人の目に驚嘆や好奇として映ったのかへの理解が深まるとともに、日本人だからこそ気づけない日本人の姿を浮き彫りにしてくれている。
 個人的に興味が惹かれたのは、消火ポンプ輸入の経緯の話しと京都天明の大火時における商館長と光格天皇との交流の話しである。ネタバレになってしまうので詳細は避けるが、なんとも日本人の気質があふれる逸話だ。

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