レポート

湖に沈む「幻の橋」タウシュベツ川橋梁を行く!

 

 
 ※本記事の内容は2024年08月時点のものです。

 北海道上士幌町。
 大雪山東南麓に位置するこの街には、「幻の橋」と呼ばれる橋がある。正式名称・タウシュベツ川橋梁は、知る人ぞ知る北海道屈指の秘境だ(「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」として北海道遺産や近代化産業遺産に認定されている。なお)。
 これは2024年08月にタウシュベツ川橋梁を訪れた時のレポートです(なお見学方法はこちらから)。

 


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 北海道にはかつて多くの鉄道路線が敷設されていた。
 しかし人口の流出や基幹産業の推移から、廃線となった路線もまた多い。
 このタウシュベツ橋梁も、かつて大雪山麓と帯広を結んだ士幌線の一部だった。材木輸送の貨物列車の往復を主とした地域産業を支えた路線である。だが道路整備の拡充と木材需要の低迷などが相俟って、次第にルートの縮小と人口の流出により、輸送の手段はバスやトラックに取って代わられた。国営民営化直前の1987(昭和62)年、全線廃線となる。
 cf,士幌線 - Wikipedia
 
 
 
 ・・・とまあ小難しい話しはこのくらいにして、一路、上士幌町へ。
 

 旭川方面からは大雪山をグルっと回って「三国峠」経由で向かう。
 
 まずは腹ごしらえとして「ナイタイ高原牧場」のレストランへ。

 こちらのナイタイ高原牧場は日本一広い公共牧場で、その広さは実に1700ha!東京ドーム約360個分に相当する。

 展望台からは雄大な十勝平野を一望できる!


 んでもってこれまた”かの有名なトイレ”で用を足し、いざ現地へ(当然のことながらトイレ内は撮影禁止なので、気になる方は是非訪れていただきたい)。
 
 
 さて、
 今回はタウシュベツ川橋梁のあるぬかびら源泉郷のNPO法人が主催するツアーに申し込んでいた。
 ので、同じ上士幌町内にある糠平湖湖畔へと向かう。
 


 集合場所である「ひがし大雪自然ガイドセンター」へ。

 温泉街とはいえ、今では人口100人に満たない小さな集落だ。
 


 フツーに民家の先にシカがいたりする。
 
 なお、今回ツアーでお世話になった方のご自宅では、この数日後に庭先でヒグマが寝てたりなんだりあったらしく、ニュースにもなっていた
 
 
 
 で、なんやかんやあって、ガイドさんの案内のもと、クルマで橋梁近くまで移動する。

 後述するが、ツアー以外でも橋梁へ見学する方法がいくつかある。


 で、下車後、ほんの数百メートル森の中を歩くと途端に視界が広がるわけで、
 
 
 

 そこにあるのが今回の目的地・タウシュベツ川橋梁だ!
 
 
 1939(昭和14)年、旧士幌線の糠平駅-幌加駅間で音更川の支流であるタウシュベツ川に駆けられた橋梁である。
 

 その後糠平ダム建設に伴うダム湖(糠平湖)に水没することとなり、士幌線は別ルートに切り替えられ、同時にこの橋梁もその役目を終えることとなった。
 

 現在、季節ごとの環境の変化や発電量にともなう調整から、糠平湖の水位は年間を通して劇的に変化している。そのためこの橋梁も水面下にある時期もあれば、全体が水面上に顔を出すこともあり、それが「幻の橋」と呼ばれる由縁だったりする。
 

 コンクリート製のアーチ橋ながら、過酷な環境と経年から、走自体は満身創痍で、軽く触れただけでもボロボロと崩れてしまう(ガイドさんの許可のもと、直接触れることができる)。
 

 クルマから降りた林の中へとかつて線路がつながっていた様子が今でも残る。

 
 

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 さてここから一路旧幌加駅に向かう。


 なおタウシュベツ川橋梁だけではなく、国道沿いからもかつての橋梁跡を見る事が出来る。そしてそのうちいくつかは国の有形文化財に指定されているが、諸事情によりタウシュベツ川橋梁は含まれていない
 
 さて着いたのは旧幌加駅。


 ここは北海道開発局の除雪センターが隣接しているので結構場所的にも分かりやすい。
 cf,幌加駅 - Wikipedia
 


 かつての駅舎や住宅跡の土台が今なお残されている。
 こちらの幌加駅、全盛期には350名を超える人口を有していたという。しかし1987(昭和62)年の士幌線廃線に伴い廃駅となった。ちなみに廃駅当時でも、一軒だけ民家があったという。
 

 フツーにトリカブトとか自生してたりもした(笑)
 

 徐々に自然へと戻りつつある姿が物悲しくも幽玄である。

 この幌加駅より更に奥には士幌線の終着駅・十勝三股駅があった。そちらは最盛期である昭和20~30年代には1500名を超える人口を有する林業集落として大いに発展していたという。聞くところによると当時は映画館などもあって、かなり栄えていたらしい。なお現在でも2世帯3名の方が暮らしているとのことで、うち一軒は「三股山荘」という喫茶店を経営されている(2024年08月現在)。
 

 cf,十勝三股駅 - Wikipedia
 
 
 
 さて矢継ぎ早に見てきたタウシュベツ川橋梁だったけど、一つの時代が作り上げられ栄華を極め、そして衰退と荒廃を経て今なお当時の面影を残す姿に、少子高齢化・人口減少が叫ばれて久しい昨今の日本の未来の姿を少し垣間見た気持ちにさせられた。
 形あるものもいつかは滅びる。
 だがそこにかけた先人たちの努力と苦労の跡は、歴史という記憶となって後世にも語り継がれる。そしてその痕跡こそ、物言わぬ生き証人であることは間違いない。
 大正から昭和にかけて、北の大地で花開き終焉を迎えたひとつの鉄路。その沿線に繰り広げられたであろう人間のドラマに想いを馳せるだけでも、言葉にはできない歴史の重みを感じられてならない。
 

 なお、いらすとやさんでもタウシュベツ川橋梁がイラスト化されてたりします(笑)
 
 
 

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【タウシュベツ川橋梁への行き方】

 以下、3つの方法があります。
 
 
1,タウシュベツ展望台を利用する。
 国道273号線沿いの駐車帯から200メートルほど林を進んだ先にあります。橋からは750mほど離れているので、橋の全貌を眺めるにはうってつけですが季節によっては水没して見られない場合がある。
 
 
 
2,自家用車で行く。
 道の駅かみしほろで林道ゲートのカギを借りて、自家用車およびバイクで行くこともできる。
 ただし、利用するには事前にWEB予約が必要で、貸出状況によっては利用できない場合もある。更に季節および時間的な制限、また大雪山国立公園内なので、入林規制等さまざま順守する必要もある。
 ・タウシュベツ川橋梁の林道ゲート通行鍵 予約WEBページ
 
 
3,有料の見学ツアーを利用する。
 NPO法人ひがし大雪自然ガイドセンターの有料ツアーを利用して橋の近くまで行くことができ、今回はこのツアーを利用した。
 実施時期やツアー内容もさまざま用意されている。こちらも事前予約が必要だが、ガイドさんによる詳細な解説と併せて、ヒグマ等の野生動物に遭遇する危険性回避のためにも一番オススメの手段。
 ・NPO法人ひがし大雪自然ガイドセンターHP
 
 

 
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