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【読書感想】前田浩『最強の野菜スープ』

 
 最強の野菜スープ
 前田浩
 出版社:マキノ出版
 発売日:2017/11/16

"未病"というキーワード

 著者は、ノーベル化学賞候補にも名を連ねる抗がん剤研究の世界的権威。そんな著者が伝える病気に負けない身体を作るノウハウを散りばめたのが本書。
 「食事とは薬膳」という言葉もある通り、日々給する食事が私たちの身体を作り上げている。健康も病も、その遠因はすべて食事にあるといって過言ではない。
 本書では著者が長年にわたる研究の末に見出した"病を未然に防ぐ"スープが紹介されている。がん治療がいかに進歩しようとも、まずは予防あってのものだ。
 
 近年、老化や病原の主たる原因として「活性酸素」の名が挙げられている。呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部が通常よりも活性化された状態になることで、体内の"酸化"が促進されてしまう原因物質である。地球上で生きていく上で酸素は必要不可欠な物質であるが、酸素と結合することで起こる酸化は、鉄が錆びることをはじめ物質を腐食することにつながることは既知のものだ。人体においてもまた然り。
 この活性酸素に対抗しうるのがいわゆる「抗酸化物質」で、生物はその多くを野菜から摂取している。野菜中心の食生活が勧められる背景にはそういう理由がある。
 しかし野菜中心の食生活とはいえ、サラダなどの生野菜ばかりではその効果を十分に得ることはできない。というのも、野菜、無論植物の細胞には特有の細胞壁が存在しているからだ。
 そこで示されているのが「野菜スープ」である。野菜を煮込むことで細胞壁を破壊し、ファイトケミカルをはじめとした抗酸化物質を摂取しやすくなるという利点を兼ね備えている。ビタミン群、特に従来熱に弱いとされてきたビタミンCなども、近年ではそれほど熱による阻害を受けないことが分かってきている。加えて、煮込むことで野菜の栄養素はスープ内に充満・拡散し、無駄なく接種することができる。一石何鳥にもなる料理なのである。

 本書では抗酸化物質をはじめ、科学的な用語がとにかく詳細かつ丁寧に解説されている。また明るい文面に加えて、スープ作りのレシピはカラー写真で紹介されており見やすい。レシピ自体も大変簡易で、料理が苦手という人でもハードルがかなり低い。
 「食事を制限しすぎるとかえってストレスになります。何事もバランスです。食べる頻度を控えめにすれいいのです」
 楽しくおいしく食べてこその食事、その真髄がここにある。
 

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