「食べない」ひとはなぜ若い? 空腹でオン!「長寿遺伝子」の驚異
船瀬俊介
出版社:ヒカルランド
発売日;2018/02/06
食べる量を減らすこと、「抗齢学」の奇跡を謳う
「大食短命」という言葉がある。文字通り「大食いの人は短命である」という意味だが、果せるかな我々が子どもの頃から言って聞かされてきたことと若干矛盾する風でもある。
「三食しっかりよく食べ栄養をつけて……」という文言も今は昔で、2016年にノーベル医学生理学賞を受賞した大隅教授の研究テーマである「オートファジー(細胞自食作用)」、あるいは断食(ファスティング)の流行などと相俟って、少食であること食べないことによる効果効能が取りざたされて久しい。
これは以前紹介したルイジ・コルナロ著『無病法』の記事でも書いたことである。
『無病法』は今から数百年前に書かれたものだが、本書は最新の科学研究なども踏まえた"少食"のススメである。
冒頭、2010年チリの鉱山で33名の作業員が閉じ込められた落盤事故に言及し、彼らがなぜ69日経っても全員無事に且つ健康的な状態で救出されたのか、その経緯と理由が語られる。
一方、「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の句で有名な正岡子規がなぜ病いによって34歳という若さで亡くなったのか、その背景にも言及されている。早い話し、子規は極めて大食漢だったのである。
今手元にある子規が死の直前まで綴った日記『仰臥漫録』を見ても、
「朝食 ぬく飯三椀 佃煮 梅干 牛乳五勺紅茶入 菓子パン二つ
午飯 粥三椀 カツオのさしみ みそ汁一椀 梨一つ 林檎一つ 葡萄一房
間食 桃のかんづめ三個 牛乳五勺紅茶入 菓子パン一つ 煎餅一枚
夕飯 稲荷鮓四個 湯漬半椀 誓悟と昆布の汁 昼のさしみの残り 焼せいご 佃煮 葡萄 林檎」(明治34年9月13日条)
脊椎カリエスを発症し晩年はほぼ寝たきりの生活をしていたとは思えない量である。ちなみにずっと看病にあたっていた母と妹は、少しでも栄養のあるものをとそれらは子規へ譲り、自分たちはかなり些末な食事ばかりとっていたようだ。結果、二人とも長寿を全うしたとはなんとも皮肉な話しである。
ではなぜ少食にすると若返るのか?
それは少食にすることで「長寿遺伝子」を覚醒させる点にある。この「長寿遺伝子」は他の遺伝子を守る酵素を活性化させ、老いや病の原因と言われる「活性酸素」を減らし組織を若返らせる効果がある。
本書ではそのメカニズムや効果効能がこれでもかと書き連ねられている。そしてそのどれもが理解しやすく腑に落ちる無いようなので、読後は「これは少食を実践するしかない」という思いにさせられる。
もちろん一日二食や一食といったプチ断食でもそうだが、血糖値が上がりやすい体質になる恐れがあることも確かだ。しかしそれも対策方法をきちんと実践することで解決できる。
「腹八分目、医者いらず」という言葉もあるが、本書ではそれに続き「腹六分で老いを忘れ、腹四分で仏に近づく」と語られている。他にも「空腹を楽しめ」「真の健康体は食べないほど調子が出る」などの文言は、少食にすることの真のメリットを巧みに言い当てている。
私自身数年前よりこの「少食」を実践していて感じていることだが、まさしく本書の通りと言っても過言ではない。普段は農家として肉体労働ばかりなのでまったくの絶食や断食は出来ないのだが、各食を少量にすればそうした問題からも解放される。そして実際、その効果効能を肌身に感じている。
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超一流は無駄に食べない──「少食」×「空腹」で活力がよみがえる!