そのオリーブオイルは偽物です: 値段が高くても本物はごくわずか
多田俊哉
出版社:小学館
発売日:2016/05/27
オリーブオイルにみる食品流通の闇
健康食品として以前より注目を集めている"オリーブオイル"。
店頭で"エキストラバージン"といった表示を目にしている人も多いだろう。
私自身、味的な側面からもオリーブオイルは好んでサラダなんかにかけたりするが、本書で語られるオリーブオイルの正体を知ると正直ゾッとしてしまう。
文字通り、オリーブオイルはオリーブの果実から抽出された植物油である。酸化されにくいオレイン酸を多く含み、食用に限らず化粧品や薬品などの原料にも用いられている。
その効能は人口に膾炙して久しいが、果たして我々が口にするそれはどうか?
本書を読むと、その生産と流通の過程における暗部が陽のもとにさらけ出されている。
実際何を信じればいいのかという問いが沸き上がるほどだ。更にそれが口に入るもの、そしてその効能が広く宣伝されているがゆえに、この"暗部"には憤りを感じる。
日本の食品表示の緩さについては以前からかなりの指摘はされていたものの、このオリーブオイルに関しては国際的にもかなり緩く且つズブズブな背景が見て取れる。
地中海を代表するグルメ国家・イタリアよりスペインこそ世界最大の生産国であること。それに引けを取らないトルコ産のオリーブオイルがなぜ日本に輸入されていていないのか?
オリーブオイルという一製品ではあるが、その背景にある闇は深い。
本書ではそうしたオリーブオイルにまつわる周辺への糾弾ばかりではなく、解決策とも言うべきオリーブオイルの選び方にまで言及されている。
しかしその実際は高いものはダメ、安いものもダメというなんとも歯がゆい解説に終始する。
もちろん輸出入の如何を問わず実直に生産する農家と流通経路があるのも確かで、結局自分で探り自分の舌で考えろというところに落ち着く。
これは非難ではなく、消費者たる一人ひとりに与えられた課題である。
一方、海外はもちろん日本国内においてもオリーブオイルの品質に関するコンテストが数多く催されているという情報は有益である。
こうしたコンテストの上位入賞者を吟味することで、正真正銘のオリーブオイルを口にする可能性も高まる。
いずれにしても、こうした食品に関する暗部の情報は知っておきたい反面、知らなかった方が良かったと思うことは必須である。
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