【読書感想】パオロ・ジョルダーノ『コロナの時代の僕ら』

 
 コロナの時代の僕ら
 パオロ・ジョルダーノ 著  飯田亮介 訳

 出版社:早川書房
 発売日:2020/04/24
 

これから生きていくために必要な「選択」する意思

 
 今年2月下旬から3月上旬のあいだ、新型コロナウイルスの急速な感染拡大の一路を辿っていたイタリアで、新進気鋭の作家によって紡がれたエッセイ集。
 世界数十か国で緊急翻訳されるなど話題になっている本書。
 収録されている27篇のエッセイはいずれもコンパクトで、かつ予備知識のない人でも容易く理解できるほど平易に書かれている。嵐の前の静けさといった状態のころの首都ローマの様子、人々の往来や交流など、描写する語り口は柔和だが、言い知れぬ緊張感がにじみ出ている。
 危機迫る状況下、物理学を専攻していた著者は数学的なアプローチでこのパンデミックの分析を試み始める。そして真偽不明の夥しい情報の渦と相俟って、次第に混迷と不安、恐怖や怒り、失望といった感情的な噴出と感染流行のピークがせめぎ合うなか、これからどう生きていくべきか、未来のあり方を模索する重要性を提言するに至る。
 エッセイとはいえメッセージ性がかなり強いという印象を受けた。それは渦中にいるという意識がそう語らせたのだろう。著者の友人も感染し、また同じアパートの住人が入院したという。
 「著者あとがき」として日本語訳版に特別収録されている「ウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」という一文、ここを読むだけでもどれだけの人が心理的に救われ、あるいは将来に期待を抱けるようになることだろう。著者は繰り返し「僕は忘れたくない」と力強く語る。
 何を守り、何を捨てるのか。これまでの生活を一変させた「コロナの日々」の終焉後に必要な”選択する意思”。
 日本でも新しい生活スタイルなどの提言もされているが、著者は全てを変えたりあるいは全てをもと通りにすることを目指すのでなく、「もとに戻ってほしくないこと」を考える重要性を強調している。結びの「『まさかの事態』に、もう二度と、不意を突かれないために」という一文は重い。

 なお本書の翻訳者も20年来イタリアに在住している。
 著者とは違い、人口1000人にも満たない地方の小村在だというが、「訳者あとがき」でその小さな村での様子なども紹介されており興味深い。

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