【読書感想】松本修『全国マン・チン分布考』

 
 全国マン・チン分布考
 松本 修

 出版社:集英社インターナショナル(インターナショナル新書)
 発売日:2018/10/05

雅な言葉にも俗な言葉にもあるそれぞれの旅路。

 90年代の話題作『全国アホ・バカ分布考』の著者にして、人気番組『探偵!ナイトスクープ』のプロデューサーがおくる方言論。
 タイトルから推して量るべく、本書は女性器・男性器の呼称にまつわる方言について考察されている。
 なぜ性器の呼称を調べるに至ったかについては、冒頭にとても興味深い逸話が記されている。それは本来『探偵!ナイトスクープ』で取り上げるべく寄せられたもののようだが、さすがに地上波では取り扱えないということで、本書が書かれることになったようだ。

 さて性器の呼称ということで、若干浮ついた想像をする人もいるかもしれないが、本書は大変大真面目に調査・考究された研究書だ。
 『古事記』『日本書紀』にはじまる古典籍から江戸時代の春画、各地方に残る方言を集めた辞書類に至るまでつぶさに調査されているにとどまらず、テレビ局に勤める傍らさまざまな大学で講師として授業を持ち、その縁故で知り合った研究者や学生らの伝手を頼りに幅広い年代へのフィールドワークさながらの聞き取り調査を行っている。
 その素材の多さには目を見張るものがあり、前著『全国アホ・バカ分布考』以上に、深淵で奥深い方言の世界を垣間見せてくれる。
 単に性器を表す言葉といえばあまりに俗だが、その枠組みでさえ、古く雅な宮廷文化を背景とするものもあれば、考え抜かれた末に定着あるいは忘却されたものもある。
 その多様さが、”言葉”という人類が生み出した最大の発明品の宿命であり、同時にひとびとの営みの歴史そのもののように感じられてならない。

 決して教科書に載ることのない歴史の一端を、本書は白日の下にさらけ出してくれている。

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 全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路

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