高次元空間を見る方法
次元が増えるとどんな不思議が起こるのか
小笠 英志
出版社:講談社(ブルーバックス)
発売日:2019/09/19
高次元空間を「見る」ことで"見えてくる"摩訶不思議な空間のおはなし
本書はタイトルそのまま、高次元空間を文字通り「見る」ための方法がなるべく数式などを用いずに記されている。
数式を用いないまでも、数学的な記述は散見されるがそれも最低限にとどめられ、限りなく平易に言い換えられた解説が添えられている。
つまり、数学的な高次元空間のそれを図解と言葉を機軸に徹底して文章化している、とそんな感じだろうか?
「結び目理論」や「M理論」といった高次元空間モデルの文系向け解説書、とも言い換えられるかもしれない。
そもそも次元について書かれた本はいくら入門レベルのものでもかなり専門的なため、初学者には相当の敷居の高さがある。
それを著者はなるべく平易に、かつ"直感的に"理解することを目的に執筆しているのだから、なかなかの力作だ。
……とはいえ、ある程度数式に慣れている読者にとっては、かえってその解説が難解に思えるかもしれない。実際、数式で示した方が理解あるいはイメージしやすい部分があるのも確かだ。
逆に予備知識がない読者がゆっくり咀嚼しながら読み進めるには適しているともいえる。
そして件の高次元空間を「見る」ための方法なのだが、正直この分野に明るくない人にとっては「え? そんなんアリなの!?」と思わず声が出てしまいそうになるだろう。
実際その次元においてはごくごく普通のことではあるだろうけれど、例えば我々が住むとされている3次元空間では4次元や5次元を認識できない。よって高次元空間での出来事を認識するには3次元以下のかたちに置き換えねばならない。その結果、なんとも狐につままれたような方法となってしまうだけだ。
だが基本的な考え方はブレることなく同じなのだから、どうしてそうなるかを一度理解できてしまえば、その後はイメージも湧きやすいと思う。
いずれにしても高次元の空間モデルを認識するための考え方なり視点の置き方には"慣れ"が必要だろう。
以前、量子力学を専攻する知人とハミルトニアンについてああでもないこうでもないと話しをしていた折、「考えるな、感じろ」とブルース・リーのようなことをいわれたことがあるが、高次元空間についても似たような節があるだろう。
なるべく頭を柔らかくしてイメージする。そうしないといくら懇切丁寧な解説が施された本書でも、特に後半の方は読み進められないかもしれないw
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Newton別冊『超ひも理論と宇宙のすべてを支配する数式』