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【読書感想】加藤文元『ガロア 天才数学者の生涯』


 ガロア 天才数学者の生涯
 加藤文元

 出版社:KADOKAWA(角川ソフィア文庫)
 発売日:2020/01/23

稀代の天才数学者がみつめた世界の姿

 イケメン数学者名高い加藤文元先生による「ガロア」伝。かつて中公新書から出された『ガロア―天才数学者の生涯』を加筆修正したのが本書である。
 さて、加藤先生の専門は代数幾何学だが、その礎はいわゆる「ガロア理論」によって築かれている。そのガロア理論を産み出した人物こそ、本書の語るエヴァリスト・ガロアその人である。
 ガロアといえば、二十歳そこそこでほぼ憤死ともいえる非業の死を遂げた天才として人口に膾炙して止まない偉人だ。人生の大半は数学と政治活動に注力され、女性を巡る決闘の末に命を落としている逸話はあまりにも有名だ。
当然、そんなガロアの生き様は今でも多くの人々を魅了し続けている。
 だが同時に、昔からその壮絶な人生を語る多くの伝記も著されているのも確かで、そのほとんどが彼の人生を描くことに注力されてきた。
 本書の優れているところは、これまで著された様々な伝記を比較検討するだけでなく、時代的背景はもちろん数学史的背景にまで言及されている点だ。こうした伝記は他に例を見ないのではないだろうか? 時代は異なれど、同じ数学者だからこそ語りえる視点が本書にはある。また加藤先生の深い見識が、一見堅苦しくも思える「数学」への障壁を和らげてくれている。
 また本書は、ガロア幻の論文の序文が掲載されている。これは同時代的に批判されたことにより、長らくその全容が公表されてこなかった論文の覚書である。本邦初訳で掲載されているにかぎらず、その解説はあまりにも先進的だったガロアの洞察力を前提に考察されていて分かりやすい。
 ガロアという人物に憧れを抱く人だけではなく、これから数学を志そうとしている学生にとっても必読書といえる。
 
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 数学ガール/ガロア理論 (数学ガールシリーズ 5)

 
 
 

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