「民族」で読み解く世界史
宇山卓栄
出版社:日本実業出版社
発売日:2018/01/25
"民族"というダイナミズムの見えざる壁
学び直しや教養と銘打って国内外の歴史を解説する書籍は、近年溢れかえっている。
本書はその中でも「民族」という言語・文化・慣習などの社会的特徴からカテゴライズされる集団を基軸に、これまで歩んできた人類の歴史を紐解いている。
本書の特徴的な部分は、ヨーロッパや東アジアの歴史にちょい足しで周辺部の歴史を解説することなく、中央アジアやアフリカなどかなり広い視点に立って書き出されている点だ。
また「いつ」「誰が」「なにをした」という教科書的な観点を排しているので、世界史の概観を把握しやすく世界史の勉強にハードルの高さを感じていた人にも読みやすいだろう。
著者はもともと大手予備校で世界史講師を勤めていたということもあって、書き口も面白く平易だ。
現在も世界各地で燻る民族紛争や人種差別問題の背景が、まざまざと浮かび上がってくるようだ。
ただ、中立的な語り口を全面に出してはいるが、ところどころ偏向的な見方が垣間見える。もちろん完全中立的な視座で世界史を語ることは困難を極める。しかしもう少しその辺りへの配慮や思慮を工夫してほしかった感じは否めない。
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