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【読書感想】森川すいめい『その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――』


 その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――
 森川すいめい
 出版社:青土社
 発売日:2016/06/24

「対話」することの重要性

 「生きやすさ」とはなにかを求め、精神科医が自殺率の低い地方の街を巡ったフィールドワークの記録。
 どうしてその街では自殺率が低いのか? 田舎という閉鎖的な空間において、派閥や因習といったせせこましいしがらみが付いて回るのは必須だ。だが自殺希少地域においての人間関係が「疎で多」という切り口から眺めると、地域性に関わらず、生活上の諸問題を解決していくシンプルな人間の行動が見えてくる。
 恥ずかしながら、本書を通じて「自殺希少地域」という言葉があることを初めて知った。また自殺の多い国や地域に対して、社会的な問題や地域性、特に日照時間の問題から北に行けば行くほど自殺率が高いといった漠然とした印象しか持っていなかったが、例えば青森のような雪国であってもこうした地域があることは驚きだった。
 序章において、本書の結論はすべて終章にまとめられているとあるが、各章を読み進めることで一精神科医が現場で何に気づき何を感じたか、その結論に至る過程をたどることはとても興味深い。

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