「まさか」の人生
読売新聞社会部「あれから」取材班
出版社:新潮社(新潮新書 1089)
発売日:2025/05/19
「まさか」の人生(新潮新書) 「あれから」シリーズ Kindle版
断片だけでは語れない人生のつづき
過去の事件や一世を風靡した当事者たちのその後といまの姿を追った読売新聞「あれから」。そこで取り上げられた20編をまとめた本書は、同取材班による『人生はそれでも続く』の続編にあたる。
昭和後期から平成にかけて世間を賑わせた話題は数えきれないが、その中でも、本書で取り上げられているものは人々の記憶に深く刻まれているものが多い。記憶に刻まれているといっても、ほぼ全て、指摘されてはじめて「そういえばそんなこともあった」と思い出す程度であろうが、当事者にとっては忘れようにも忘れられない出来事ばかりだ。
一時期の断片的な人生の瞬間を世間は取り上げ話題にするが、それが理不尽な運命であったとしても、人生そのものはその後も続いている。ごく当たり前のことだが揺るがぬ真理を、20編のそれぞれのストーリーを通じて改めて認識させられた。
本書は新聞記者が取材・執筆したものだけあって、各編10ページほどまとめられていてとても読みやすいが、限られた紙面の中で事の詳細とその後を綿密かつ無駄なく書き上げられているのはさすがだと言える。なにより取り上げられているジャンルの幅広さは圧巻で、読んでいてまったく飽きがこなかった。
また、執筆した「あれから」取材班記者略歴が巻末に掲載されているが、若手記者の多さにも驚かされた。その当時は幼少あるいは生まれていなかった記者が、取材を通してはじめてその出来事に触れたという場合も多かっただろう。だがそんなことを感じさせない筆力は、さすが新聞記者だと唸るしかない。なおこの記者略歴は小ネタ集かと思うくらいに砕けた内容で、シリアスな本書にあって最後に和ませてくれる。