フランクリン自伝
松本慎一・西川正身 訳
出版社:岩波書店(岩波文庫 赤 301-1)
発売日:1957/01/07
一生懸命働くことの大切さ
「アメリカ建国の父」の一人に数えられるベンジャミン・フランクリンのことは、アメリカ紙幣などで知る人も多いだろう。また”Time is money”という金言を紹介したことでも知られる。
そんな彼が自らの半生を回顧した本書は、本国アメリカにおいては誰もが知るロング・ベストセラーだ。
貧しいながらも敬虔な家庭に育った例は、他の偉人の生い立ちにも通ずるものがある。だが、思春期以降の紆余曲折をなぞれば、彼が定めた「13徳」がどのような過程で成立したものかがよく分かる。
その一方、アメリカ人の根源的な気質というのだろうか、その時々の出来事に対する感想や苦悩の背景などが深掘りされず、どちらかといえば自身の実績を前面に押し出している感がある。見栄とか虚栄とまでは言わないにしろ、子孫に向けた自伝ということもあってか、かなり体裁を繕っている感じが否めない。
しかしながら、本当の意味で豊かな人生を送るために何が必要なのか、その示唆はふんだんに盛り込まれている。そして、この大成者が一生涯を通じて体得した処世術は、アメリカ資本主義の源流ともいえるだろう。
最後に、本書が出版されるまでに数奇な過程をたどったことはあまり知られていないが、フランクリン自身の科学者としての側面が垣間見れるのは実に興味深い。他方、アメリカ独立運動の渦中が描かれていないというのは極めて残念だ。なにはともあれ、自分もなにがきっかけか忘れてしまったが、アラフォーになった今、再読してみて良かったと思えた。