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【読書感想】永田カビ『これはゆがんだ食レポです』

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 これはゆがんだ食レポです
 永田カビ
 出版社:双葉社 (アクションコミックス)
 発売日:2024/12/26

 
 これはゆがんだ食レポです Kindle版
 

執着できることの幸せ

 過食嘔吐のメンヘラ女子とジャンクフード、それとお酒という「禁断」とも呼ぶべき組み合わせで綴られた永田カビ先生による案の定の食レポ。「案の定」といったのは、これまでの作品同様、扱われている内容が大して変わらないという意味でである。
 だが、作品を重ねるにつれ、自己の内面に対する考察がだんだんと深さを増していっているように思える。ドリルのように一直線に深掘りするのではなく、螺旋状に同じところを堂々巡りしているように見えて、その実奥深い部分へと少しずつだが着実に向かっている、そんな印象を受けるのだ。もちろん、作者がどこに向かおうとしているのかは分からない。それは作者自身にもどうしていいのか分からない部分であるのだろうから、それ故にこそ過食や暴飲といった自制の利かなさがより生々しくシリアスのものに感じられる。
 それはそうと、本書は「食レポ」とタイトルにある通り、作者が愛してやまない(?)食品たちへのこだわりが滔々と説かれている。だが結局最後には「吐く」というオチがつくのだが、それは摂食障害ゆえの末路だ。もっとも世の中には摂食障害で苦しんでいるひとが大勢いる。だが作者の場合、「おいしく食べられて吐ければOK」という半ば開き直りともとれる心境に至り、障害の苦しさから脱却した感じがある。それまで抱えてきた自責や罪悪感から離れ、ただただ「おいしい」と感じられる幸せを享受している。その姿を見るにつけても、人それぞれ違いはあれど幸せを感じられるということがどれほど尊いものか噛み締められずにはいられない。

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