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【読書感想】オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』

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 パリ・ロンドン放浪記
 ジョージ・オーウェル
 出版社:岩波書店(岩波文庫 赤262-2)
 発売日:1989/04/17

稀代の作家の真骨頂

 名作『1982』の作者・オーウェルのデビュー作にして、創作の背景を形作った原体験のルポ。
 パリとロンドンそれぞれで送ったどん底生活を精力溢れる筆致で描いた労作だが、実際はどちらかというと取材あるいは潜入ルポに近いものがある。というのもそもそもオーウェル自身は裕福な家庭で生まれ育っている。しかし実家の金銭的援助を頼りとせず、自ら選んでどん底生活へと急落した背景は、生来の好奇心がそうさせたのかもしれない。
 パリでのホテルの裏話、ロンドンの浮浪者生活の実際。どちらも表面的には悲惨そのものに感じても、筆者の冷静な視点と解説を通すとどこか人間味のある温かな感情の交流のようなものを感じる。パリ時代、週末の場末の酒場でのどんちゃん騒ぎを記した一節が個人的にとても興味深く面白く読めた。

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