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【読書感想】武田惇志・伊藤 亜衣『ある行旅死亡人の物語』

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 ある行旅死亡人の物語
 武田惇志 / 伊藤亜衣
 出版社:毎日新聞出版
 発売日:2022/11/29

 
 ある行旅死亡人の物語 Kindle版

ひとりの人間の人生と生きていた証

 ひとりの行旅死亡人の女性の謎を解き明かそうとする二人の記者によるルポ。
 件の女性は孤独死した状態で発見されたが、部屋には3400万円にのぼる多額の現金とわずかな身の回りのものを残すばかりでその素性が判然としない。警察や探偵といった捜索のプロでもたどり着けなかった身元、それを一介の記者が執念で探り当てたところに痛快さがある。もちろんその人生の全てあらましが分かったわけではない。謎はなぞとして永遠にそのままなのだろう。だからこそヘタなミステリー小説よりもミステリアスで、「事実は小説よりも奇なり」とはまさしくこのことだろう。
 記者二人の丹念な取材がもたらした意外な結末は本書に譲るとして、取材時に記者がどういった気遣いをするのか、その裏側も垣間見ることができるのは興味深い。

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