日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法
苅米 一志・著 日本史史料研究会・監修
出版社:吉川弘文館
発売日:2015/04/04
古文書を読み解くための必携書
高校国語の「漢文」の授業を通し、漢語文法は必ず学習する。だが中世日本で発達した「変体漢文」は、当時の日本語を漢文に倣って綴られている文章のため、漢文のそれにはない語法や用字を多く含む。
本書はそんな「変体漢文」を読み下すための用字・語彙・語法を、的確かつ簡潔にまとめた文法書である。
古文書学の分野においては峰岸明著『変体漢文』という名著があるが、本書冒頭にも書かれている通り極めて専門的な内容になっていて初学者にとってはハードルが高い。また変体漢文訓読の大きな障害として、学派や地域によって方法に差異があることも指摘したうえで、本書ではそうした点を今一度見直し、変体漢文の訓読に重点をおいた簡単で標準的な手引書を目指している。
「主語・主部」「述語・述部」「修飾語・修飾部」「接続語・接続部」という四つの大きなカテゴリーを設け、それぞれに属する語の解説と注意点を簡潔に記している。用例を多数挙げてくれていて、更に読み下しと現代語訳また出典もしっかり掲載されている。章末に演習問題も附されており、実践的な白文の読解を試みることもできる。
ただ、本書は内容を簡潔にするあまり、漢文を読むための最低限の基礎知識への説明は皆無なので、大前提として高校レベルの古文・漢文を含む国語文法は必要だろう。