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【読書感想】菅啓次郎『本は読めないものだから心配するな』

 

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筑摩書房
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 本は読めないものだから心配するな
 菅啓次郎
 出版社:筑摩書房(ちくま文庫)
 発売日:2021/09/13

濃密な本の旅

 詩人である著者の読書エッセイ。読書家にとってはなんとも魅力的で心現れるようなタイトルだが、その実本書で引用されている本を次々読みたくなってしまう不思議な一冊。
 著者自ら遅読を告白し、20年来の積読に対し深く侘びを入れておきながら「一歩ずつ進めばそれで良い」と、半ば開き直ったかのような読書に対する姿勢が全体を貫く。
 「本を読んで忘れるのはあたりまえ」「年齢とともに読み方が変わる」積読を普通とする蔵書家にとってはなんとも救われる言葉だが、その反面いかにも含蓄深い。
 詩人のもつ豊かな言葉の切り口は、たんなる読書エッセイの枠を越え、読書「通」の風を感じる。それもそのはずで、著者は紹介しているテクストの流れを五感で感じながら、明晰な考察と端正な筆致で更なる彩を加える。それ故にこそ、読んでいる側にまでその息吹が如実に感じられるのだ。

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