ベテルギウス
Joshua Higuchi
出版社:幻冬舎
発売日:2019/11/28
地球からもっとも輝いて見える恒星。その終末を巡る理論派SF
夜空を見上げてみえる星空の中、もっとも輝いて見える恒星がオリオン座のベテルギウスだといわれている。
また数年来、その輝きの減光が取りざたされ、今や超新星爆発寸前の星とも言われている。
多少物理学に興味のある人ならその異様さが分かると思うが、現在確認できるベテルギウスの形態は雪だるまのようにいびつな形をしている。
このことがなにを意味しているのか?
本書はそんなベテルギウスが終焉を迎えたその直後、我々の住む地球を含め、全天の星々にどのような影響を与えるのか、その未来を予測し描かれたSF小説だ。
しかし一端のSF小説にはない明解極まる理論に基づいたストーリーが、フィクションをさながらノンフィクションのように感じさせる凄みを与えてくれる。
ベテルギウスの終焉――。
太陽の10倍以上の重さのある恒星は、その終焉を迎える時、限界まで膨れ上がり超新星爆発を起こす。
その際、それまで恒星を組成していたさまざまな物質が宇宙空間に放出されることになるが、その中でも特にやっかいとされているのが「ガンマ線バースト」と呼ばれるガンマ線の大放出だ。
超新星爆発によるガンマ線バーストは、恒星の自転軸とほぼ同じ方向(自転軸の2度の範囲)に放出されるが、その威力は超新星爆発を起こした恒星から50光年以内の星に住む生命体は壊滅的な打撃を受けるとされるほど凄まじい。
件のベテルギウスだが、現在の観測から地球はベテルギウスの自転軸からおよそ20度の位置にあることが分かっている。よって仮にベテルギウスが超新星爆発を起こしガンマ線バーストを放出しても、地球に影響はないと予想されている。
しかし、前述の通り現在確認されているベテルギウスの形態は雪だるまのようないびつな形。その結果もし自転軸もゆがんでいたとすると……? というとこからストーリーが始まるので、これから先は本書にあたってもらいたい。
登場人物たちの会話はかなり専門的な部分をつついているので、予想に反せず専門用語も多いがそれなりに噛み砕いたセリフとなっているので安心して読める。巻末には適宜解説も付されている。
ただ難点というかこれはひどいなと思ったのが、小説としての出来の部分だ。
地の文がほぼなく会話だけが続く場面。急すぎる転回とあっけない結論。ラノベやなろうはもとより、昨今の小説家でもこういう描き方をママ目にするが、せっかくここまでしっかりとした世界観を構築してくれているのだから、その辺りも手抜かりなく読ませてもらいたかったと思う。
逆にこれは面白いと思えたのが、数年来テレビ番組などで話題を呼んでいる某都市伝説とのからみ。都市伝説と一口にいっても、日本では大まかに陰謀論などと括られてしまうきらいがあるが、本書のような筋書きなら、これもまた信憑性のあることと好奇心をくすぐられてならない。
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ベテルギウスの超新星爆発 加速膨張する宇宙の発見