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【読書感想】エドワード・スノーデン『スノーデン 独白: 消せない記録』

 
 スノーデン 独白: 消せない記録
 エドワード・スノーデン 著 , 山形浩生 訳

 出版社:河出書房新社
 発売日:2019/11/30
 

 アメリカの秘密を暴露し命を狙われている男。その半生。

 
 2013年、それまで陰謀論やフィクションとして語られていたNSA(アメリカ国家安全保障局)による国際的監視網(PRISM)の実在を告発したエドワード・スノーデン。
 その大胆な暴露は世界最大の国家を相手にした途方もなくハードルの高い告発だった。

 本書はそのスノーデンの半生と告発の経緯を、脚色なく、また釈明することなく語った私小説風の自伝だ。
 彼の思想的なバックボーンがどのように形成されたのか、その結果としてなぜあの事件が引き起こされ亡命するに至ったのかが克明に描かれている。
 問題となっているファイルの公開に関する一連のやりとりについては、かつて刊行された『スノーデンファイル』の方が詳細で面白味もあるが、本書では件のデータをどのように持ち出したかやNSAのセキュリティ、告発に協力してくれたジャーナリストらとの通信手段など、事件そのものの周辺あるいは前後談に関する証言があまりにもリアルだ。
 聡明にして卓越した技術をもっていたスノーデン氏をして辿りつけた極秘文書。その暴露が命がけの偉業であったことは疑いようがない。ただ恐ろしいのは、氏と同じ情報に接していながら国の違法行為に対して何の違和感も抱いていない周囲の人間とのギャップ、そしてその現実を目の当たりにして落ち込む姿だ。「民主主義」を掲げていながらその国民や同盟国を監視する体制を、司法も行政も止められなかったという事実。末尾で多少の救いのある言葉も聞かれるが、国に背くということがどういうことか、痛いほど思い知らされる。

 半生という部分では、大のゲーム好きで知られるスノーデン氏がどんなゲームに興じてきたかが具体的な作品もあげられ語られている。
 誰しにもあった少年時代。
 そのあどけない姿を振り返ると涙するものがある。

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 スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実

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