感想・レビュー

2020/11/25

【読書感想】日経コンピュータほか『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」』

  みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」 日経コンピュータ,山端宏実,岡部一詩,中田敦,大和田尚孝,谷島宣之 出版社:日経BP 発売日:2020/02/14    日本のIT業界における歴史的大プロジェクト。そこから見える組織論とシステム論。    1999年、旧第一勧業銀行・旧富士銀行・旧日本興業銀行の三行が経営統合を発表し、2002年の新銀行設立を目指した。  しかしその当初からさまざまなシステムトラブルに見舞われ、2011年の東日本大震災後の大規模なシス ...

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2021/12/28

【読書感想】文春オンライン特集班『娘の遺体は凍っていた 旭川女子中学生イジメ凍死事件』

  娘の遺体は凍っていた 旭川女子中学生イジメ凍死事件 文春オンライン特集班 出版社:文藝春秋 発売日:2021/09/10 同じ悲劇を二度と繰り返さないために……  今年3月、凍死体として発見された廣瀬爽彩さん。学校でのイジメを苦にした自殺。  その後、この事件は大々的に報じられ、それは海外でも取り上げられるほどだった。そこにメスを入れた文春オンラインによる取材手記。    正直、読んでいても胸糞悪くなる事件の真相である。  普段なら芸能人のゴシップをすっぱ抜くなど、良い意味でも悪い意味でも存在意義を示 ...

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2023/11/13

【読書感想】坂本龍一『音楽は自由にする』

 音楽は自由にする 坂本龍一 出版社:新潮社(新潮文庫) 発売日:2023/04/19  とある音楽家の生き方について  今年2023年3月、巨星が墜った。坂本龍一その人である。東京藝術大学大学院卒、テクノ音楽を産み出したYMOでの活躍、映画『戦場のメリークリスマス』の鮮烈なテーマ曲、『ラストエンペラー』でのアカデミー賞受賞など、その経歴を今更書く必要はないだろう。  本書は、2009年に刊行された坂本氏が自身の半生を語った自伝の文庫版である。  氏をめぐるエピソードは、これまでもさまざま媒体で数多く語ら ...

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2020/8/27

【読書感想】宇野常寛『遅いインターネット』

  遅いインターネット 宇野常寛 出版社:幻冬舎 発売日:2020/02/19  瞬時に世界とつながれる社会の中で"考える"ことの重要性とその過程  科学の時代の幕が開いて数百年。特にここ数十年でもっとも普及したインターネットは、一体わたしたちの生活になにをもたらしたのか?  かつてのインターネットといえば、ダイアルアップ接続の音を聞きながら回線がつながるのをひたすら待ったりしたものだが、今やスマホを開けば、あるいはパソコンを立ち上げればすぐさま世界中のありとあらゆる情報に接することができる。極めて便利に ...

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2022/5/22

【読書感想】和田秀樹『「感情の老化」を防ぐ本』

  「感情の老化」を防ぐ本 和田秀樹 出版社:朝日新聞出版 発売日:2019/03/13 老いに抗うエトセトラ  生まれ落ちた生き物にとって"死"とは避けられない運命だ。  その運命に至るための過程の道程は、成長と衰退という美しい曲線を描いている。  本書ではその"衰退"、つまり「老い」の問題を「感情の老化」を切り口にいかに予防し、そして人生をより若々しく生きていくために必要なノウハウが示されている。  ネタバレになってしまうが、結論「積極的に年甲斐もないことをしよう」という一言に尽きる。  年齢を重ねれ ...

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2021/1/13

【読書感想】田村由美『ミステリと言う勿れ』

  ミステリと言う勿れ(1) 田村由美 出版社:小学館 発売日:2018/01/10  ミステリっぽいけどミステリっぽくもない、ミステリな対話編  『BASARA』などの作者・田村由美先生の話題作。  作者曰く「舞台劇をイメージ」した「閉鎖空間での会話だけ」が織り成される内容は、主人公と登場人物との対話に重点が置かれ、数あるミステリや探偵ものの小説やマンガにはない独特の世界観を描き出している。  主人公はどこにでもいる大学生……ではなく、名前も髪型も趣味趣向もどこかちょっと風変わりで、いうなれば"不思議ち ...

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インド哲学仏教学

2023/6/10

『バガヴァッドギータ―』原典訳してみた!その1(Ⅰ・1~11)

 さて『バガヴァッドギータ―』原典訳してみた!の一回目は第1章1~11節までです。  今回扱うテキストについては前説編を参照のこと。 テキスト   ①dhṛtarāṣṭra uvāca /  dharmakṣetre kurukṣetre samavetā yuyutsavaḥ /  māmakāḥ pāṇḍavāścaiva kimakurvata saṃjaya // 1 // ②saṃjaya uvāca /  dṛṣṭvā tu pāṇḍavānīkam vyūḍhaṃ duryodhanasta ...

インド哲学仏教学

2023/8/1

【ヒンドゥー教の聖典】『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!~前説~

      目次  まえがきと若干の解説  『バガヴァッドギーター』テキスト  参考文献        【本編】  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その1(Ⅰ・1~11)  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その2(Ⅰ・12~19)  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その3(Ⅰ・20~30)   ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その4(Ⅰ・31~39)  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その5(Ⅰ・40~47)  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!そ ...

インド哲学仏教学

2023/6/10

『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その5(Ⅰ・40~47)

       5回目は第1章40~47節  記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで)       テキスト   ①kulakṣaye praṇaśyanti kuladharmāḥ sanātanāḥ /  dharme naṣṭe kulaṃ kṛtsnamadharmo'bhibhavatyuta // 40 // ②adharmābhibhavātkṛṣṇa praduṣyanti kulastriyaḥ /  strīṣu duṣṭāsu vārṣṇe ...

感想・レビュー インド哲学仏教学

2024/1/5

【読書感想】清水俊史『ブッダという男 初期仏典を読みとく』

ブッダという男 ――初期仏典を読みとく (ちくま新書) created by Rinker ¥880 (2024/04/25 13:15:11時点 Amazon調べ-詳細) Kindle Amazon 楽天市場   ブッダという男 初期仏典を読みとく 清水俊文 出版社:筑摩書房(ちくま新書1763) 発売日:2023/12/07 人間・ブッダは何を語っていたのか  ネット上を一時騒然とさせた仏教学界隈のアカハラ問題。その渦中にあった著者による「あとがき」が脚光を浴び、本書は刊行直後から ...

インド哲学仏教学

2020/5/21

『般若心経』をサンスクリット原典で読む!

 多分日本で一番有名な仏教経典である『般若心経』は、正式には『般若波羅蜜多心経』と呼ばれ、今から1600年以前、サンスクリット語で書かれた『Prajñāpāramitā-hṛdaya-sūtram』を漢訳したものだ。  そもそも『般若心経』は、仏になるために菩薩が行う修行・知恵(般若波羅蜜・般若波羅蜜多)を説く『般若経』という経典群の中のひとつで、大乗仏教の根本思想である"空"の思想を簡潔にまとめている。そのため、漢訳されたものもその短い文言の中で大乗仏教の根幹が説かれているとされ、多くの宗派で今なお用い ...

インド哲学仏教学

2023/6/10

インド二大叙事詩とヒンドゥー教の聖典について

【改訂記録】 ・2021/02/24 「あらすじ」欄に各巻・章のタイトル追記。   前説  インドの二大叙事詩『マハーバーラタ(Mahābhāratam)』と『ラーマーヤナ(Rāmāyana)』、そしてヒンドゥー教における最高の聖典と称される『バガヴァット・ギーター(Śrīmadbhagavad gītā)』について、その概要をまとめてみました(個人的な復習の意味も含め)。  かなりザックリとしたまとめになっていますが、本記事はちょっと実験したい部分もあって、今後も随時改訂したりしていきたいと思います。 ...

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後鳥羽院project

2023/7/28

【ご冗談でしょ定家さん!?】『明月記』講読その1~治承四五年記①(治承四年二月~五月)~

       以前公開した『藤原定家「明月記」にみる後鳥羽院の姿』シリーズをやっていた頃から、いつかは『明月記』自体の講読もやりたいと考えていた。  ただ、当の『明月記』が難解極まりないことと、明月記研究会はじめ堀田善衛御大などさまざまな研究者や愛読者がすでに多くの著作や論文を出している。またネット記事なんかでもあちらこちらで書かれていることもあって、「今さら自分がブログ上でやってもなぁ・・・」と二の足を踏んでいた。  とはいえ相変わらずの性と言おうか、思いついたんだからやってみようかしらと、最近になって ...

後鳥羽院project

2021/10/8

藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その2(建仁2年~元久元年)

     (甚之助蔵 『明月記研究』明月記研究会編)   ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻)   ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻)   ・その3 元久2年~建永元年(第1巻)   ・その4 承元元年~承元2年(第2巻)   ・その5 建暦元年~建暦2年(第2巻)   ・その6 建保元年~建保6年(第2巻)   ・その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻) 目次 ●藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その2(建仁2年~元久元年)  建仁2年  建仁3年  元久元年 建仁2年 1202年 後 ...

後鳥羽院project

2021/12/17

藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻)

     後鳥羽院像に迫るための資料  (甚之助蔵 『大日本史料』第4輯、東京大学史料編纂所、昭和43年)   ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏   ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻)   ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻)   ・その3 元久2年~建永元年(第1巻)   ・その4 承元元年~承元2年(第2巻)   ・その5 建暦元年~建暦2年(第2巻)   ・その6 建保元年~建保6年(第2巻)   ・その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻) 目次 ●藤原定家 ...

後鳥羽院project

2021/12/8

藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その5(建暦元年~建暦2年)

     後鳥羽院の姿を記録する主な公家日記3  (甚之助蔵 『源家長日記』風間書房、昭和60年。『続史料大成21 伯家五代記』臨川書店、昭和42年。藤原長兼『増補史料大成31 三長記』臨川書房、昭和40年。藤原経房『史料大成22・23 吉記』内外書籍、昭和10年)   ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏   ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻)   ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻)   ・その3 元久2年~建永元年(第1巻)   ・その4 承元元年~承元2年(第2巻) ...

後鳥羽院project

2024/1/8

【隠岐ふたたび…】RE:後鳥羽院を巡るフィールドワーク~後編~

      前回のあらすじ  コロナ禍を経て念願の隠岐再訪を目指したワタクシ甚之助は、酷暑の中を必死の思いで隠岐・海士町に降り立った。  そして遂に、前回目の当たりにすることのできなかった後鳥羽院「お腰掛けの石」と対面する。  次いで、SNS上では長らく付き合いのある通称・元大賞さんと邂逅し、ふたたび隠岐神社・御在所&火葬塚跡へと足を踏み入れた。そこで目にしたものは「ひと夏の幻」だった……。   目次 ・पुनर्मिलाम ओकि・・・ ・キーポイント美保関 ・それからのこと   出雲国風土記 (講談社 ...

後鳥羽院project

2023/1/15

後鳥羽院『遠島御百首』私見その5~雑 三十首(上)~

      ・その1~春 二十首~ ・その2~夏 十五首~ ・その3~秋 二十首~ ・その4~冬 十五首~ ・その5~雑 三十首(上)~ ・その6~雑 三十首(下)~       雑三十首(上) 目次  七十一、いにしへの  七十二、をきわびぬ  七十三、とへかしな  七十四、もしほやく  七十五、かもめなく  七十六、なみまゆく  七十七、しほかぜに  七十八、さととをみ  七十九、とはるゝも  八十、ながき夜を  八十一、あかつきの  八十二、とにかくに  八十三、すぎにける  八十四、夕月夜  八十 ...

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レポート

2019/6/22

オッサンだから今話題の『DEOCO』使ってみましたレポw

     ※個人的な感想です。効果には個人差があります(多分)。      どうも、基本的に口と腋と足が臭く“哀しい臭い”と書いて男の『哀臭(あいしゅう)』を漂わせている甚之助です。見事にオッサンです。    さて、昨今巷のオッサンたちの間では   ●リアル君の名は。おっさんが女の子の匂いを買ってきて身につけたら、たまらない背徳感を味わえた (わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる)   ●デオコで女の子の匂いを感じるためには女の子との思い出が必要という問題 (本しゃぶり)  これらの記事を皮 ...

レポート

2020/1/26

北区赤羽の住宅街をプラっと散歩してきましたレポ

  昨年夏に上京した折、ちょっと時間が空いたので赤羽で途中下車して住宅街を散歩してきたレポートです。  赤羽といえば最近では住んでみたい街として人気もうなぎ上りのようですが、細い路地に"せんべろ"飲み屋街と、知る人ぞ知る隠れたディープスポット密集地帯だったりする。また昨年暮れ、タレントの壇蜜さんと漫画家・清野とおるさんのご結婚が報じられた際、清野さんの地元ということでもその名が更に広まったりしたのは記憶に新しいところ。  駅付近のふざけた七福神像やホテル屋上の自由の女神像なんか特に有名ですが、今回は赤羽駅 ...

レポート

2019/7/30

【探訪】上野『大統領』私的呑みかた論w

     Amazon  上野アンダーグラウンド     ※この記事は飲酒を薦めるものではありません。  未成年の飲酒は法律で禁じられています。  また飲酒運転は絶対にやめましょう。  お酒は程よく気持ちよく!        数年前、「遊んで学ぶお父さん」のUronpoiさんを誘って以来、氏をどっぷりハマらせてしまった感があって若干の責任を感じていたりするのですが、よくよく考えたら自分でレポを書いたことがないなと思い、ホント今更ながらの「大統領」レポ。  レポートと言っても、普段どんな風に大統領で呑んでい ...

レポート

2023/6/2

あがた森魚さんの映画を見に行くin小樽【佐藤敬子先生を探して】

目次  前説  映画『佐藤敬子先生を探して』  私にとっての「あがた森魚」という人  脚注    Amazon  愛は愛とて何になる   ◎前説  8月上旬、私は農作業の傍らで北海道のローカルラジオ番組に耳を傾けていた。  その番組の一コーナーにとあるミュージシャンがゲスト出演していたのだが、なにやら熱心に口角泡を飛ばす勢いで必死に言葉を紡いでいる。件のコーナーでは、さまざまなミュージシャンのメッセージが流されたりゲスト出演した後で楽曲が放送されるのだが、その日に限ってはなかなか曲に移らない。最終的に楽曲 ...

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2021/2/26

【2021改訂版】ブログの更新サボってうつ病と闘ってきた

 さて今から遡ること6,7年前、メインの方で『ブログの更新サボって鬱病と闘ってきた』(現在削除済み)という記事をアップした。  公開当時はまだまだ頭もボンヤリという感じで、実際その後一年半にわたって更新も休止。その間、なんだかんだ寛解した。  寛解後は再びいろんなことにチャレンジしてみたくなったりで、結果目まぐるしい毎日を送るなか、自分がうつ病だったこともそれに関する記事をアップしたことも忘れていた。  しかし先日、メインの方で『【 鬱病 】経験者が語る! うつ病になるとできないこと5選!【 症状 】』と ...

レポート

2021/3/12

【浪人時代の思い出】アリミツ君とマコちゃんのこと。

 受験シーズンも終わりに近づき、高校・大学はじめ、いろんなところで合格発表の知らせを耳にする季節となった。  毎年この時期になると、必ず浪人していた頃のことを思い出す。  私は某大手予備校で一年間浪人生活を送り、その間は予備校付属の寮で生活していた。  花の都・TOKYOに出てきたはずが、そこはなぜか木々の緑豊かで動物の鳴き声響くところだった。    人生初の満員電車。  都心ド真ん中にある予備校校舎へ通う日々。  起きてる時は(当然)勉強漬けだったが、ときどき破目を外して寮の仲間たちと長時間語り合ってい ...

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